第12回研究・活動報告会の開催

平成30年度「地球にやさしいカード」助成金贈呈式/第12回研究・活動報告会を開催

緑の地球防衛基金は、平成30年11月2日(金)、東京・中央区新川の馬事畜産会館2階会議室において、平成30年度「地球にやさしいカード」助成金贈呈式および第12回研究・活動報告会を開催しました。
 先ず、第1部の助成金贈呈式においては、大石正光当基金理事長、池田明彦株式会社セディナ執行役員から挨拶が行われ、引き続いて、助成対象13団体に対して、大石理事長から平成30年度上半期助成金目録が手交されました。
 続く第2部の第12回研究・活動報告会においては、2団体から活動報告が行われました。
 先ず、FoE Japanの満田夏花事務局長兼理事からは、「地球温暖化に向けた取組」と題して報告がありました。
 FoEは世界75カ国にネットワークを有する国際環境NGOで、各国ベースで活動をしており、その中でFoE Japanは日本人として取り組むべき環境問題に焦点を当てて、市民とともに解決に向けた活動を行っているとの説明が最初にありました。
 気候変動に対する取組では、異常気象の脅威に直面する途上国の人々の声を日本の市民に届けるようにしており、具体例として動画サイトで公開しているフィリピン・レイテ島での暴風雨被害と被害者たちの声を集めた映像が会場で流されました。
 また気候変動は、貧困や飢餓などSDGsが掲げる他の課題の要因ともなっており、それは人為的なものであるというのが今日の国際合意であるとの説明がされました。この問題解決のための目標としてCOP21で採択されたパリ協定では、世界の平均気温上昇を産業革命以前と比べて2度より低く保つこととされました。しかし昨年10月に発表されたIPCC特別報告書では、この目標では不十分であるとの警鐘が鳴らされたことが報告されました。

このパリ協定の枠組みを受けて日本でも目標が定められ、中期目標として2030年度の温室効果ガスの排出を2013年度の水準から26%削減することが定められました。しかしこの目標は、EUなど他の先進国と比べても不十分なものであること、また日本の気候変動・エネルギー政策が、原子力・石炭火力重視であることに対する問題が指摘されました。
 さらに世界が脱炭素化・脱化石燃料に方向転換している中、日本では石炭火力発電所の新設計画数が突出しており、海外へも石炭火力を輸出しようとしていることから世界で批判されているとの報告でした。
 そこでFoE Japanは、日本が海外へのインフラ輸出による温室効果ガスの削減ではなく、国内での削減を重視する具体的・野心的な長期目標を設定すること、また電力多消費を促進する原子力発電ではなく、持続可能な方法での具体的な省エネ・再生可能エネルギー政策により削減目標を達成すべきことを訴えているとのことでした。
 最後に、世界ではRE100のように、使用するエネルギーを100%再生可能エネルギーにすることを企業が宣言したり、化石燃料に関わる事業からは資金や投資を引き揚げるといった「ダイベストメント」の動きが起きていることが紹介されました。そして世界のこうしたグローバルな動きを個人の行動に繋げていくことが大切であり、再生可能エネルギーによる電気に切り替える「パワーシフト」や、再エネに融資する金融機関への切り替え、日本のエネルギー・気候変動政策に注目していくことなどが提案されました。
 次に、熱帯森林保護団体の南研子代表からは、「ブラジルのインディオ保護区における消火消防事業」と題して報告がありました。
支援対象地域はブラジルのシングー先住民保護区で、面積は約18万平方km(日本の国土の半分)と広大で、その地にインディオと呼ばれる先住民2万人、18部族が独自の文化を継承して暮らしていることが最初に紹介されました。
 しかし現在、不法侵入者によりこの地域に生息する動植物の乱獲、乱伐が後を絶たず、そうした密猟者やこの地域を横断する州道を通るトラック運転手の火の不始末、自然発火等による火災の発生が深刻な問題となっています。
そこで同団体は、火災が生じた際、大火になる前に鎮火させるため、州軍消防署の指導のもとインディオの若者を中心とする「消防団」の組織を支援しています。人海戦術による早急な初期消火活動が可能となったことで、2017年は消防団の活動地域に限り、被害を最小限にくい止めることが出来たそうです。またこのことが高く評価され、インディオ消防士のリーダーが、ブラジリア等で開催された国際会議で報告する機会を得たとのことでした。
 同団体では、消防団が将来的に事業を継続していけるよう、この地域に群生するクマルの苗木を育てその実を絞ったオイルを出荷し、資金にしていくことを決定したそうです。クマルの実が育つには3年間が必要なため、それまで支援をしていく計画であるとのことでした。
 研究・活動報告会の後、当基金や株式会社セディナへの質問や意見を述べる場として、また、助成団体間における意見交換の場として、懇親会を開催しました。
 全体で3時間の長時間にわたる会合でしたが、出席者は熱心に聞き入り、盛会のうちに終了しました。