ベトナム植林活動報告
- 1.現在実施中の事業
ラオカイ省環境保護植林事業(2020年度~) - ・現地報告(2021年5月)
- ・現地報告(2022年1月)
- ・現地報告(2023年2月)
- ・現地報告(2024年2月)
- 2.これまでに終了した事業
マングローブ植林事業(1994年度~1997年度)
(現在実施中の事業)
ラオカイ省環境保護植林事業
1.事業概要
・事業実施期間;2020年4月から2025年3月までの5年間。
・植林面積;15㏊。
・植林本数;3万本(1㏊当たり2,000本)。
・植林樹種;馬尾松(別名タイワンアカマツ)、カントンアブラギリの混植(どちらの樹種もベトナムの在来種であり、植林地の環境に適していることや、苗木の入手が比較的容易であることが、本件植林に採用された理由です。)。両樹種とも植林1年後には、樹高2メートル程度にまで成長するものと予測されています。
・実施計画;1年目に植林を実施。2年目以降に育林及び施肥を実施。必要に応じて2年目に補植を行う予定。
・資金助成;当基金は、ベトナム政府に年間100万円、5年間で最大500万円を限度に資金助成を実施する予定。
2. 現況
当基金が、2020年4月にベトナム政府との間で覚書を締結し、これまで実施してきた「ベトナム・ラオカイ省環境保護植林事業」は、順調に進捗し、馬尾松2万7,000本、カントンアブラギリ3,000本、合計3万本の植林が終了しました。
(1)ベトナム・ラオカイ省環境保護植林事業の実施場所
ベトナムの地図
植林場所は、ラオカイ省シマカイ郡ナンサンコミューン(ナンサン集落)の15ヘクタールの地です。
ラオカイ省は、ベトナム社会主義人民共和国(以下、「ベトナム」という。)の最北部に位置する省です。また、植林場所のラオカイ省シマカイ郡ナンサンコミューン(ナンサン集落)は、ラオカイ省の中心部から約100㎞離れた中国との国境に接した地域です。
(省は日本の都道府県にあたる地方行政区画の単位です。一般的にベトナムの行政区画は、国、省、郡、コミューンの順に細かくなります。)
(2)これまでの事業の進捗経過
① 4月1日 ベトナム政府と覚書締結
② 4月2日~5月28日 「地拵え(ごしらえ)」
③ 6月10日~7月15日 「植え穴準備」
④ 8月10日~9月8日 馬尾松の「苗木運搬」、
「植栽」及び「埋め戻し」
⑤ 10~11月 カントンアブラギリの「直播」
地拵えの写真
(地拵え)
・作業期間・内容;2020年4月2日から5月28日にかけて、植林面積15㏊全体の地拵えが実施されました。
・地拵えの主たる作業従事者;作業従事者は地域住民(ナンサン集落)で、約50名が地拵えに参加しました。
植え穴掘りの写真
苗木の写真
苗木の運搬
(植え穴準備、苗木運搬、植栽、埋め戻し)
植え穴のサイズは直径30㎝、深さ30㎝。植栽間隔は2m×2.5mです。苗木 のサイズは約40㎝~50㎝で、通直なものが慎重に選別されました。
「植え穴準備」から「植栽」まで約1か月間隔が開いていますが、これは「植え穴は植栽前十分な期間を持って準備しておき、土壌に水分が保たれた状態としておくこと」との指導が徹底されたためです。こうした対応に加え雨季期間中の植栽でもあり、植栽後に改めて水やりを行う必要はありませんでした。
また「埋め戻し」に関して、植栽の時に埋め戻した土はしっかりと固めておくことが徹底されました。傾斜地での植林であることから、降雨等によって土が流れ出ないよう配慮されたものです。
今般の作業に当たってはベトナム中央政府、ラオカイ省政府それぞれに本件植林事業に関する作業グループが設けられており、苗の準備や品質の確認等は、ラオカイ省政府の作業グループにおいて、入念なチェックが行われました。また、現地での植林にあたって、前述の穴の寸法や穴の間の距離など、「植え穴掘り」と「植え付け」に関する技術的ガイダンスをナンサンコミューンの世帯に提供して作業が進められました。
さらに、植栽後に作業グループが植栽場所をチェックして、当初の技術的設計に従って正しく植林されていることを確認したとのことです。
なお、各作業に従事した延べ人数は、それぞれ「地拵え」554人日、「植え穴準備」842人日、「苗木運搬」及び「植栽」158人日、「埋め戻し」(植栽作業の一部ともとれる。)197人日でした。
(3) 植栽樹種及び本数
植林現場と植林風景
ワーキンググループ担当者に
よる植林状況のチェック
植栽樹種及び本数は、馬尾松(別名タイワンアカマツ)約2万7,000本、カントンアブラギリ約3,000本の合計3万本です。
以前に情報として、「馬尾松とカントンアブラギリの混植で植林本数は3万本」とお伝えしてきました。今般の植林では現地を正確に確認した結果、礫地など植林困難な場所を除外する必要があり、馬尾松2万7,000本となりました。
なお、本稿執筆には詳細な事実確認が間に合わなかったのですが、10月~11月にカントンアブラギリの種子の直播(苗木ではなく)により3,000本の造成が進められており、合計3万本の植林が終了しています
この3,000本のカントンアブラギリは、馬尾松を取り囲む形で種子が撒かれています。このような形で混植が行われる理由は、本件植林地の境界を周りから明確にするのが主目的でしたが、結果として、単一樹種の植栽ではなく多様性を持った森林が造成されることとなります。
(4) 苗の成長見込み及び今後の対応
以前に情報として、両樹種とも植林1年後には、樹高2m程度にまで成長するものとお伝えしていました。しかし、馬尾松は1年後には1.5~2m程度になる見込みですが、カントンアブラギリは直播のため、1年後の樹高は30~40㎝程度に止まるとのことです。(ただし、成木になれば樹高約10mになる予定です。)
今後の対応ですが、2025年3月までの事業実施計画に基づいて、1年目の植林に次いで、2年目以降には育林及び施肥等を実施し、必要に応じて2年目に補植を行う予定です。
3.ベトナム・ラオカイ省の地図、植林の必要性
・ラオカイ省は中国との国境沿いにあり、ベトナムの最北部に位置しています。
・首都ハノイ(地図ではややラオカイの右下に表示。)からは約290㎞離れており、車、鉄道で約4時間かかります。植林現場は、このラオカイの中心地からさらに約100㎞奥まったところです。
ベトナムにおける植林の必要性
・ベトナム社会主義人民共和国(以下、ベトナム)は、南シナ海に面したインドシナ半島東部に位置し、日本と同じく南北に細長い国です。気候は温帯から熱帯にまたがり、降水量が多く、地形も起伏に富み、この結果非常に多様な森林が分布しています。
・ベトナムでは、1940年代以降、戦争による破壊や、戦後復興のための資材調達による過剰伐採、農地転換等により、森林が著しく減少しました。1940年代頃には43%程度あった森林率が、1990年代には27%に減少していました。その後は、政府の取組、国際社会の支援等による植林により森林面積は徐々に回復し、2018年には41.65%となっています。この間、「緑の地球防衛基金」も、1994年度から1997年度にかけてマングローブの植林を実施するなど、緑の保全・再生に協力してきました。
しかし森林面積が回復する一方で、貴重な生態系を有する天然林は依然減少・劣化傾向にあります。ベトナムの人口の約3割(約2,500万人)が森林などの自然資源に依存した生活を送っており、焼畑農業、開墾、燃料確保などのために行われる森林破壊が山間部において顕著です。このような背景事情から、引き続き持続的に森林を管理していくための支援が強く期待されています。
ラオカイ省及び当該地域の森林について
・ラオカイ省はベトナムの最北部、中国雲南省との国境に位置する省で、ベトナムの最高峰ファンシーパン山(標高3,143m)を有する山岳地帯です。人口は約70万人で、フモン族、タイ族、ザオ族など少数民族が多く、また高原の町サパはベトナム国内でも有数の観光地として知られています。
・ラオカイ省は森林の豊かな地域であり、貴重な動植物が生息しています。森林に区分される面積は約36万ha、省の総面積の56%を占めます(一部裸地や草地を含む値)。しかし経済発展の目覚ましいベトナムにあって、少数民族が多く居住しているラオカイ省を含む北部地域は、貧困世帯の割合が高い地域でもあります。
このため、前述のとおり森林の過剰利用による森林破壊が頻繁に見られます。
(省は日本でいう都道府県にあたる地方行政区画の単位です。一般的にベトナムの行政区画は、国、省、郡、コミューンの順に細かくなります。)
ラオカイ省における植林プロジェクトの概要
・本プロジェクトの選定にあたっては、在ベトナムの日本国際協力機構(JICA)の協力も得て、ラオカイ省からリストアップしてもらった複数の植林候補地の中から実施予定地を選定しました。本プロジェクトの予定地が位置するラオカイ省シマカイ郡ナンサンコミューンは、ラオカイ省の中心部から約100km離れた中国との国境に接した地域です。保全林として将来にわたって持続的な森林管理が期待されることや、山深く、他からの支援が行きわたりにくい地域であることから、実施予定地として選ばれました。
(ベトナムの森林は、特別利用林、保全林、生産林の3つに区分されています。保全林は、主に水源涵養、土壌侵食や土砂災害防止、防風や防砂などを目的とした森林です。)
・本件植林プロジェクトに関しては2019年10月末に大石理事長が首都ハノイを訪問し、ベトナム中央政府の森林管理委員会局長と協議を行ったのを皮切りに、ラオカイ省を訪問し事業予定地の視察、ラオカイ省農業農村開発局局長との協議、シマカイ郡人民委員会委員長との協議等を行いました。その後はベトナム側において本件植林プロジェクトに関する事業内容の検討、当基金との覚書締結交渉、2020年4月1日付けの覚書締結を経て、事業開始に至っています。
・本件植林プロジェクトの効果としては、①森林を再生することで水源涵養、自然災害防止等地域の環境保全に寄与し、地球温暖化防止に寄与すること、②植林及び育林作業を通じて雇用を創出し地域経済に貢献すること、などが期待されています。
・余談ですが、世界的にコロナウイルスの感染拡大が大きな問題となっています。しかしベトナムは、国内移動や海外からの入国を厳しく規制し、結果として感染者300名程度、死者ゼロ(2020年6月初旬現在)と、今日まで感染抑え込みに成功しています。加えて植林現場は山岳地でもあり、コロナウイルス感染拡大による事業の混乱や停滞を心配する必要がほとんどないことは何よりでした。
―ベトナム・ラオカイ省植林事業の現地報告(2021年5月)―
順調に生育している馬尾松、カントンアブラギリ
当基金が、2020年4月にベトナム政府との間で覚書を締結し、これまで実施してきた「ベトナム・ラオカイ省環境保護植林事業」は、2020年11月に3万本の植林が終了しています。
本件事業の進捗状況等に関して、今般ベトナム政府から、現地報告が送られてきましたので、その内容を紹介します。馬尾松の苗木、カントンアブラギリの種子が順調に生育している様子などが記されています。
1.植林場所の平均気温と降雨量
植林場所は、ラオカイ省シマカイ郡ナンサンコミューン(ナンサン集落)の15ヘクタールの地です。ラオカイ省は、ベトナム社会主義人民共和国(以下、「ベトナム」という。)の最北部に位置し、シマカイ郡ナンサンコミューン(ナンサン集落)は、ラオカイ省の中心部から約100㎞離れた中国との国境に接した地域です。植林場所には本件プロジェクトの案内板が設置されています。(写真1)
ベトナム最北部の山間地帯であるシマカイ郡の気候は寒く、2020年11月から2021年4月までの最初の6か月間の平均気温は16.5℃で、特に11月から1月の平均気温は15.0℃に止まりました。加えて、昼と夜の温度差はかなり大きくなっています。また、平均降雨量は、ラオカイ省の他の地域と比較してもかなり少なく、11月から2021年4月までの6か月間の合計降雨量は約400ミリメートルに止まっています。このような平均気温、降雨量などの気候条件は一般的に苗木の成長を制限しますが、本件プロジェクトではこれまで大きな影響は生じていません。
2.順調に成長している苗木等の状況
① 馬尾松(タイワンアカマツ)の苗木
2020年8~9月に2万7,000本植栽された馬尾松の苗木は順調に成長しており、生存率約90%で、高さは60㎝~80㎝に達し、新しい芽も10㎝~30㎝に成長しています。(写真2)2021年2月には最初の施肥を行いました。(写真3)今後の動向次第ですが、現在の生存率が維持されると、年末までは追加の植栽は必要ないと判断しているとのことです。
② カントンアブラギリの種子
2020年10~11月に直播された種子は、降雨量が非常に少なくすごく乾燥していたため、2021年1月ようやく発芽段階を迎えました。発芽率は約85%で、発芽は非常に安定していたため、ロットに植え替えられました。写真4~6が関連の写真です。写真4は2020年11月に種まきを行っている様子、写真5は2021年1月、発芽段階を迎えた種子の写真、写真6は、2021年5月の時点で、発芽したカントンアブラギリの高さが15㎝~18㎝に達している様子です。
なお、本件事業のベトナム側責任者として関わっているラオカイ省植林プロジェクトチームは、苗木の成長の状況や、発芽していない苗木の枯死数を定期的にチェックしています。今後、本年(2021年)9月から10月にかけてこれらのデータを再点検し、補植を行うかどうか最終決定することになります。
3.本件事業に対するベトナム側評価
ベトナム政府側は、本件の事業実施が、①地域の環境、水資源を保護し温室効果と気候変動を最小限に抑える効果があること、②地元世帯が植林及び保全作業に参加することで収入の増加、追加の雇用を生み出し、社会経済発展に貢献することなど高く評価しており、長期的な協力関係の構築に強い期待を寄せています。
―ベトナム・ラオカイ省植林事業の現地報告(2022年1月)―
着実に成長を続けている馬尾松、カントンアブラギリ
当基金が、2020年4月にベトナム政府との間で覚書を締結し、これまで実施してきた「ベトナム・ラオカイ省環境保護植林事業」は、2020年11月に3万本の植林が終了しています。
本件事業に関して、今般ベトナム政府から、2021年の活動報告が送られてきましたので、その内容を紹介します。馬尾松の苗木とカントンアブラギリの種子が、順調に生育している様子などが記されています。
1.植林場所の平均気温と降雨量
ベトナムは、南北に約2,000㎞の細長い国土を有しており、ベトナム中・南部の気候は熱帯性気候、北部は温帯性(亜熱帯)気候に分類されます。しかし、植林場所のあるシマカイ郡はベトナム最北部の山間地帯で、過去1年間の平均気温は、14℃~18℃に止まりました。また、平均降雨量は、例年よりもやや少ない400ミリメートルでした。
しかし、植樹した馬尾松(別名タイワンアカマツ)及びカントンアブラギリは原産種であり、こうした気候条件にも適応し順調に成長しています。
2.順調に成長している苗木等の状況
① 馬尾松(タイワンアカマツ)の苗木
2020年8~9月に2万7,000本植栽された馬尾松の苗木は順調に成長しています。樹高の平均は約1m~1.2mで、1.6m程度に育っている木もあります。(写真1~3)
苗床から野外への植栽による環境変化により、初年度の成長は遅くなりますが、樹木が環境に適応する2年目以降は、より良く成長すると思われます。
② カントンアブラギリの種子
2020年10~11月に直播された種子は、2021年1月ようやく発芽段階を迎えました。それから約1年が経過し、高さが約30㎝~40㎝に達する等、安定して成長しており活力があります。
3.2021年の苗木の補植状況
植林後の活着率は90%以上で、植林の技術設計に示した活着率の水準には達していますが、損傷した苗木、枯死した苗木に対応して、補植作業を行いました。
捕植した樹種は馬尾松で、補植本数は全部で約3,000本です。1回目の補植は、2021年6月に馬尾松2,000本、2回目の補植は2021年10月に馬尾松1,000本でした。全てナンザン・コミューンの住民の手で行われました。なお、2021年3月は、降雨量が非常に少なく補植するのに適さなかったため、補植は行いませんでした。
4.2021年の除草の状況
2021年3月、6月、10月の3回、下刈りを行いました。苗木の手入れにあたって、侵入植物を駆除し、周囲をきれいにし、発根を促進することで、苗木が光合成と発育に最適な状態になるよう努めました。
なお、2020年4月に締結した覚書において、2年目は「除草及びまたは(and /or)施肥を行う」とされていましたが、今般ベトナム側から「森林樹は植え付け前に最初の施肥のみが行われ、それ以降には施肥は行わない」旨の返答がありました。
5.これまでの植林及び育成作業等についてのベトナム側所見
今般の植林地の地形は非常に高く急勾配で、小さな低木が密生しているため、苗木の手入れをする作業者の移動が難しく、苗木が圧迫されるのを防ぐことは困難な状況でした。しかし、ベトナム側からは、森林管理に十分な注意を払い、苗木が着実に成長していることを確認しているとの返答がありました。
なお、ベトナムにおいても新型コロナウイルスが蔓延しており(2022年3月1日現在、感染者数344万人余、死者4万500人余)、本プロジェクトの実施に当たっても野外での植栽、手入れの展開、監視、検査の実施に影響がありました。しかし、これらの問題を克服し、現在も計画通りに作業を行うことが出来ているとも返答がありました。
6.本件事業に対するベトナム側評価
ベトナム政府側は、本件の事業実施が、①地域の環境、水資源を保護し温室効果と気候変動を最小限に抑える効果があること、②地元世帯が植林及び保全作業に参加することで収入の増加、追加の雇用を生み出し、社会経済発展に貢献することなど高く評価しています。しかし、15ヘクタールの植林面積では、必要な環境目標を推進することが困難であるとして、ベトナム政府側からは、長期的な協力関係の構築に強い期待が寄せられています。
―ベトナム・ラオカイ省植林事業の2022年活動報告―
着実に進捗している植林事業
(2023年2月報告)
当基金が、2020年4月にベトナム政府と覚書を締結した「ベトナム・ラオカイ省環境保護植林事業」は、同年11月に3万本の植林を行い、現在は、補植や除草など、森林の育成管理が進められています。
本件事業に関して、ベトナム政府から、2022年活動報告が送付されましたので紹介します。
馬尾松の苗木が順調に生育する一方、カントンアブラギリの活着率の向上に取り組む様子などが記されています。
1.植林場所の気温と降雨量
植林地のあるベトナム北部は温帯性(亜熱帯)気候に分類されます。しかし、植林場所は、ベトナム最北部の山間地帯にあるため、2022年の平均気温は、約19℃に止まり、特に冬には、地温が0℃以下となり、植物が枯れる危険がある霧氷も生じました。また、年間降水量も約400ミリメートルに止まりました。
苗木の成長には厳しい気候条件ですが、植樹した馬尾松(別名タイワンアカマツ)及びカントンアブラギリは原産種ですので、現地の気候条件にも適応し成長しています。
2.苗木の生育状況
① 馬尾松(タイワンアカマツ)の苗木
2020年8~9月に2万7,000本植栽された馬尾松の苗木は、順調に成長しています。2022年2月現在、平均樹高は約1.3m~1.6mに達し、2mを超える木もあります。(写真1)
植林した翌2021年には、枯れた苗木等に対応して3,000本の苗木が補植されました。こちらも順調に成長しており、2022年2月現在、平均樹高は50㎝~70㎝に達しています。活着率も高く、85%を超えており、植林の技術設計上、追加して補植する必要がないため、22年には更なる補植は行われませんでした。(写真2)
② カントンアブラギリの種子
カントンアブラギリは、2020年10~11月に、森林区画の境界線に沿って3,000本分が直播されました。種子から育てていることもあり、発芽したのは翌2021年1月頃で、その後も成長が遅く、乾燥や雨不足などの現地の気候条件にも左右され、順応に時間がかかっている状況です。ベトナム側では、2021年と2022年に何度もカントンアブラギリを播種しましたが、活着率は50%にとどまっています。そのため、2023年4月、5月に、補植本数は未定ですが、カントンアブラギリをさらに追加で植える予定であると、ベトナム側から報告がありました。
なお、2020年に直播されたカントンアブラギリの樹高は、2022年2月現在、平均で60㎝~1mとなっており、1.5mに達する木もあるとのことです。(写真3)
また、2021年に補植されたものが平均で40㎝~60㎝、2022年に補植されたものが20㎝~40㎝となっており、緩やかではありますが、着実に成長していることが分かります。(写真4)
3.2022年の除草の状況
2022年3月と9月の2回、除草と発根を行いました。苗木の手入れにあたっては、周囲の植物の伐採、根の栽培と雑草の除去、枯れ木の除去を行いました。
除草は、30~40人がナイフやツルハシなどの農具を持って作業します。全員が同時に周囲の雑草やブドウの木を取り除き、苗木が光合成と発育に最適な状態になるように作業しました。2023年には、2回の下刈り(1回目は3~4月、2回目は8~9月)を予定しています。
4.2022年植林活動にあたって苦労したこと
今般の植林地は急峻な地形であり、多くのつる植物や低木が繁茂しているため、植林のメンテナンスを行う住民にとって困難な状況であったと報告されています。(写真5)
なお、2022年の円相場の変動(円安が激しい)のため、当基金からの助成金が目減りして、植林活動を行う上で困難があったとも報告されました。(円安がこういう形で影響を与えていることを改めて感じた次第です。)
5.本件事業に対するベトナム側評価、当基金への要望
ベトナム政府側からは、本件植林事業における植林と森林管理の作業は上手く実施されており、年間計画を着実に遂行していると報告されています。
また、本件の事業実施が、①地域の環境、水資源を保護し温室効果と気候変動を最小限に抑える効果があること、②地元世帯が植林及び保全作業に参加することで収入の増加、追加の雇用を生み出し、社会経済発展に貢献することなど高く評価しています。
しかし、15ヘクタールの植林面積では、必要な環境目標を推進することが困難であるとして、ベトナム政府側からは、長期的な協力関係を構築し、植林面積を拡大することに強い期待が寄せられています。
―ベトナム・ラオカイ省植林事業の2023年活動報告―
着実に進捗している植林事業
(2024年2月報告)
当基金が、2020年4月にベトナム政府と覚書を締結した「ベトナム・ラオカイ省環境保護植林事業」は、同年11月に3万本の植林を行い、現在は、補植や除草など、森林の育成管理が進められています。
本件事業に関して、ベトナム政府から、2023年活動報告が送付されましたので紹介します。馬尾松の苗木が順調に生育する一方、カントンアブラギリは成長が緩やかで、適応に時間がかかっている様子などが記されています。
1.植林場所の気温と降雨量
植林地のあるベトナム北部は温帯性(亜熱帯)気候に分類されます。しかし、植林場所は、中国との国境に近いベトナム最北部の山間地帯に位置しており、2023年の平均気温は、例年とほぼ同じ約20℃でした。最も暑い6月の平均気温は32℃に達する一方で、最も寒い1~3月の平均気温は12℃に止まりました。0℃まで下がる日もあり、低温の時は有害な塩霧を伴うことが多く、人と家畜の健康や、林業生産に大きな影響を与えたとのことです。また、年間降雨量は平年を下回り、約235ミリメートルに止まりました。
苗木の成長には厳しい気候条件ですが、植樹した馬尾松(別名タイワンアカマツ)及びカントンアブラギリは現地の気候条件に適応した原産種ですので、正常な成長を確保するには充分だったとのことです。
(写真1)植林地は、ベトナム最北部に位置します。冬場は0℃まで下がる日があり、年間降雨量は少なく、苗木の成長には厳しい気候条件です。
2.苗木の生育状況
① 馬尾松(タイワンアカマツ)の苗木
2020年8~9月に2万7,000本植栽された馬尾松の苗木は、順調に成長しています。2024年2月現在、若木の平均樹高は約1.5m~3.0mで、4mに達している木もあるとのことです。成長は比較的均一です。(写真2、3)
馬尾松は成木になるまでには更に約3年を要し、その頃には樹高が約5~6mになります。
2023年には、枯れた若木等に対応して1,000本の苗木が補植されました。また、雑草やブドウの蔓の除去など下刈りがわれました。
② カントンアブラギリの種子
カントンアブラギリは、2020年10~11月に、森林区画の境界線に沿って3,000本分が直播されました。種子から育てているため成長が遅く、乾燥や雨不足などの現地の厳しい気候条件もあり、適応するのに時間がかかっています。ベトナム側は、2023年にカントンアブラギリの補植を継続しました。しかし、植林地域の土壌は緻密で、意思の割合が高いため、成長は緩やかです。
カントンアブラギリの平均樹高は、2024年2月現在、平均で1m~1.2mとなっています。(写真4,5)
3.除草など森林整備状況
2023年には、2回の森林整備作業が行われました。
3月の最初の作業期間では、植林地を守るための有益な草の播種と農作物の間作とを組み合わせながら、基礎となるべき盛り土が行われました。
9月の2回目の作業期間には、植栽した低木から、雑草や蔓を取り除く作業が含まれています。植林地は急峻な地形のため、苗木の樹冠を出して生育をよくするための枝払いは行っておりません。
各作業期間には約30~40人が参加し、ナイフやクワを使って手作業で土を盛り、種まきをしました。地元の人々は雑草や蔓を刈り取りながら、同時に苗木の根元を盛り土して、若木に最適な光合成と成長条件を確保しました。
さらに、森林レンジャー部隊や地元住民が時々森を訪れ、森林の木々が家畜や有害な野生動物により被害を受けていないか確認しました。
4.植樹と手入れにあたって困難だったこと
ベトナム側からは、植林地が住宅地から離れているため、資材や苗木の運搬、植林の実施やその後の植林地の手入れのための移動が非常に困難だったと報告がありました。
また、植林地が急峻な地形で、多くの蔓や低木の成長が非常に早かったことも、植林の世話をする地元の人々に多くの困難をもたらしたとも報告されました。
加えて、2022年から引き続く円相場の大幅下落(円安)のため、当基金からの助成金がベトナム通貨ドンに換算して大きく減価し、事業資金の大幅な減少が起こりました。
その結果、2023年夏には、ベトナム側から当基金に、事業資金が不足して困っている旨の連絡が入る事態になりました。
本件に関しては、最終的に不足額に相当する50万円を追加で助成することとしました。ベトナム側から、当基金の対応に深く感謝する旨の連絡を受けるなど一件落着しましたが、為替レートの下落による問題の発生は、初めての経験でした。
こうした様々な困難はありましたが、これまでの4年間、植林事業は概ね順調に推移してきました。
これは、ベトナム側の官民挙げての真摯な協力と、当基金の会員の皆様、及び貴重なご寄付をお寄せくださった多くの皆様のご協力の賜物であります。本稿をお借りして、皆様に厚く御礼申し上げます。
(これまでに終了した事業)
マングローブ植林事業(1994年度~1997年度)
1.事業概要
・事業実施場所:ハイフォン市ティエンラン郡
・事業実施期間;1994年度から1997年度まで
・事業の詳細、必要性等は次のとおりです。
マングローブとは、熱帯地方や亜熱帯地方で、海岸や河口の潮間帯(ちょうかんたい)で生育する植物のことをいいます。
マングローブ林は、津波などの自然災害がきたとき、防波堤の役割をして海岸を守り、薪、木炭、建築材などとして人々の生活に役立ってきたほか、その生態系のなかで、魚介類、鳥類など数多くの生物を育んできました。「生命のゆりかご」とも呼ばれています。
ベトナムでは、ベトナム戦争以前40万ヘクタールあったマングローブ林は、戦争で使われた枯葉剤と、その後エビの養殖池やOA用紙のパルプ原料とするための乱伐で、10万ヘクタール前後にまで激減しました。
その結果、漁業資源の減少や、田畑への塩害、台風や高潮などによる自然災害を呼び込み、人々の生活に大きな影響を及ぼしました。
そこで当基金では、マングローブ植林行動計画、ベトナムのマングローブ生態系研究所と協力し、ベトナムのマングローブ林の保全・再生に取り組みました。
北部タイトゥイ郡、ティエンラン郡、南部ベンチェに、約300万本のマングローブを植林しました。
期間 | 1994年度~1997年度 終了 |
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カウンターパート | マングローブ植林行動計画<ACTMANG>、 MERC(マングローブ生態系研究所) |
活動地域 | 北部タイビン省タイトゥイ郡、ハンフォン市ティエンラン郡 |
年度 | |
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1993 | マングローブ植林基礎調査実施 |
1994 | マングローブ植林事業開始。第一次植林実施。100haに100万本を植林 生育調査・苗床および新規プロジェクト地調査実施 |
1995 | マングローブ植林、新規苗床調査実施 |
1996 | ベトナム・マングローブ植林の本命樹種の本格植林 |
1997 | マングローブ植林 少年少女対象「地球のわたし」作文コンクール開催 優秀者5名によるベトナム・マングローブ生態系調査実施 |
2019 | ラオカイ省環境保護植林事業の検討開始 |
2020 | ラオカイ省環境保護植林事業の覚書締結、事業開始 3万本の植林終了 |