第八回研究・活動報告会

第8回研究・活動報告会

地球温暖化を抑える
- 第8回研究・活動報告会 -

公益財団法人緑の地球防衛基金は、平成26年11月8日(土)午後2時から、東京・中央区新川の馬事畜産会館2階会議室において「緑の地球をまもるために」の第8回研究・活動報告会(テーマ:地球温暖化を抑える、後援:株式会社セディナ地球にやさしいカード)を開催しました。第1部の基調講演では、松山優治当財団評議員・東京海洋大学名誉教授(前学長)・電気通信大学監事から、「海の温暖化の現状は?」、続いて第2部は、小野寺ゆうりFoE Japan顧問から「FoE Japanから見るIPCC第5次評価報告と気候変動」、馬場繁幸国際マングローブ生態系協会理事長から「マングローブ林は、地球温暖化抑制や、沿岸地域での自然災害軽減に貢献できるのでしょうか?」について報告がありました。参加者は熱心に聞き入り、盛会に終わりました。


海の温暖化の現状は?

緑の地球防衛基金評議員  東京海洋大学名誉教授(前学長) 電気通信大学監事 松山 優治

近年、地球の温暖化が顕在化している。地上気温上昇をはじめ、海水温上昇、海面水位上昇、氷床の融解、北極海の海氷減少など、地球温暖化と関連する現象が報告されている。地球の歴史の中でもこれほど短期間の変化は経験していない。1988年以来活動を続けるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次評価報告(2014年)では、人間活動が地球温暖化に及ぼす影響の「可能性は極めて高く疑う余地がない。」との結論を出した。複雑な地球システムであるが、IPCCの報告は多くの科学者の研究成果を取りまとめたもので、その信頼性は高いと評価できる。

そこで、「海の温暖化」について、気象庁が公表しているデータを基に紹介する。

過去100年間における、世界の海の平均海面水温の上昇は0.51℃だが、日本周辺では、この値より2~3倍高く、日本海中部域では1.7℃を超える。また、日本海深層(2,000m)での詳しい観測で海水温の上昇と溶存酸素量の低下が見て取れる。これは、日本海上空の冬季季節風の弱化が原因である。世界の海の観測データの蓄積から、全球的に海洋内部に熱が蓄積されていることが確認されている。人間活動により放出された熱が大気を温め、さらにその熱の大半が海洋に蓄積されている証拠である。

地球温暖化で海水温が上昇すると、海水は膨張し、結果として海面水位を上昇させる。近年は10年に1~2㎝の水位上昇が確認されている。近年、人工衛星の海面高度計データを基に作成された海水面変動の分布から、海面上昇の大きな海域とそうでない海域が明確に示されている。

北極海の海氷が夏季に急激に減少し、数年後の夏にはアジアとヨーロッパを結ぶ北極海航路ができるのではないかと考えられている。北極海の夏の海氷は1980年頃から減少を始めている。オホーツク海は地球上で最も低緯度で海氷ができる海である。アムール川河口域で形成された海氷が流氷となって北海道沿岸に押し寄せる。近年、オホーツク海の冬季の海氷は急激に減少しており、以前は毎年、北海道沿岸にみられた流氷も沖合でしか見られないことが多くなりつつある。

地球温暖化の原因は、CO2に代表される温室効果ガスの増加である確率は高い。1950年代から観測されているハワイ島では、1958年頃の315ppmから2012年の395ppmまで増加を続けている。さらに同じ現象は、南極昭和基地や日本沿岸での観測でも同様の結果がみられる。陸上と同様に、気象庁は日本の南方で1980年代から海水中のCO2を測定しており、表面海水中で毎年1.6ppm増加している。さらに、海水中に直接溶け込んだCO2は海水と反応し、海水を酸性化させ、現在、pHにして0.1程度低下している。海洋酸性化は貝殻の生成を難しくするなど、生物に影響が出ていると言われている。

地球で起こる様々な現象は複雑系であるために、現在の科学で説明できるものと必ずしも十分に説明できないものがある。IPCCが報告書の作成に採用する調査研究データや予測研究の成果は多くの科学者の知恵の集積である。地球温暖化の現状を海の観測データから覗き、自分たち人間の活動をどのように改善すべきかを考える材料を提供する。


「海の温暖化の現状は?」について基調講演を行う松山優治東京海洋大学名誉教授(前学長)

FoE Japanから見るIPCC第5次評価報告と気候変動

国際環境NGO FoE Japan顧問 小野寺ゆうり

政府は、2013年以降の日本の温暖化対策について、「2020年までに温室効果ガス排出を1990年比で25%、2050年に80%削減」を閣議決定した後、東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の放射能事故による全国の原子力発電所の停止の影響を受け、改めて「2020年までに温室効果ガスを2005年比-3.8%削減(90年比3.1%増加)」を表明したものの、各国から失望の声が聞かれ、日本の温暖化対策は気候目標を欠いていると言わざるを得ない。なお、各国はポスト2020年目標草案を2015年3月までに国連に提出することになっており、日本は先進国として大胆な目標に向け努力すべきである。

FoE Japanは気候変動国際交渉に関わる日本のNGOと共同で、2014年9月に「2030年に向けた日本の気候目標への提言」を取りまとめ公表している。その要点は、①国際的合意である今世紀末までに平均気温上昇を産業革命前から2℃未満に抑える目標を尊重、②温室効果ガス排出量を2030年までに90年比で4~5割を削減する、③自然エネルギーの野心的導入と省エネの強化、④脱原子力との両立、⑤次期目標(約束)草案を策定する市民に開かれた政策検討プロセスの設置を求めている。

また、エネルギー総供給が21,515PJ(ベタジュール)に対し、需要は有効利用が7,748PJ、残りが損失となっており、エネルギー供給対策と需要側対策の両面で改善が必要であり、なおエネルギー多消費社会を問い直すべきである。原子力は放射性物質汚染リスクや使用済み核燃料処分の問題を抱えており地球温暖化の解決策になりえず、原子力を依存しない持続可能なエネルギー社会にシフトすべきである。


「FoE Japanから見るIPCC第5次評価報告と気候変動」について報告を行う
小野寺ゆうりFoE Japan顧問

マングローブ林は、地球温暖化抑制や、沿岸地域での自然災害軽減に貢献できるのでしょうか?

国際マングローブ生態系協会理事長 馬場 繁幸

これまでは、自然災害への防災対策として防潮堤などで代表されるコンクリート建造物、すなわち工学的な手法が主流であったにもかかわらず、最近気候変動への適応策の一つとして、自然生態系を活用した防災・減災が検討されている。

2004年12月のスマトラ沖地震津波、2009年9月のサモア沖地震津波からは、マングローブの防災機能について、多くのことを学んだ。スマトラ沖地震津波のバンダアチェでの調査結果では、①津波の高さが8~9mであった場所では海岸から1km内陸では、マングローブ林は津波の高さを50%減勢していた、②津波の高さが10m以上だった場所では、海岸から1km内陸でも、マングローブ林は津波の水圧を減衰することなく折れていた。サモア沖地震津波の調査結果では、胸高直径39cm、生育密度700 本/ha、林帯幅100mでシミュレーションすると、マングローブ林は水圧を40%減勢していた。林帯の幅が100mの海岸林を作ることは容易ではないと思われるが、東日本大震災の復興計画では海岸400kmにコンクリートの防潮堤を作り、その中には高さ14.7m、幅80mの場所もあると聞いている。

「気候変動緩和策と適応策」からみたマングローブについて考えてみると、緩和策としては①地下に眠っているC stockを起こさないこと(保全)、②大気中CO2を地上部と地下部へ貯留(植林)、適応策としては①現存しているマングローブ林の緩衝・防災機能を維持(保全)、②マングローブ生態系の防災機能の復活(植林)と言うことになるが、植林と言っても、そう簡単なことではないように思っている。


「マングローブ林は、地球温暖化抑制や、沿岸地域での自然災害軽減に貢献できるのでしょうか?」について報告を行う馬場繁幸国際マングローブ生態系協会理事長